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Voice / インタビュー

山口大学名誉教授、(株)龍環境計画代表 内田文雄

清澄な空気に温もり
建築の可能性を広げるDI窓
山口大学名誉教授、(株)龍環境計画代表 内田文雄

三協アルミ本社に建つ「DI+smartNAV実験棟」は、2015年に横浜みなとみらいで開催された「第2回エネマネハウス2015」で優秀賞、地方創生賞を受賞した山口大学の提案「やまぐちさんの風の家」がこの地に移築され、DI窓など環境技術を検証する実験住宅として生まれ変わりました。この家の意匠設計を手掛けた山口大学名誉教授、(株)龍環境計画代表の内田文雄先生にDI窓の印象や魅力を伺いました

ガジュマルの木陰のような涼しさ

DI窓から若い頃の仕事を連想されたとお聞きしました。

内田 28歳の頃、沖縄の名護市庁舎の設計に携わりました。一般住宅にエアコンがまだまだ普及していない時代。エアコンを使わずに市庁舎全体を涼しくする方法を要望されました。そこで考えたのが、風の道という通風孔を建物の内部に通し、孔の前後の圧力差により風の道を作り、建物の熱気を抜く換気を行うことです。DI窓の話をお聞きしたとき、沖縄でのこの仕事のことを思い出しました。

沖縄に来て初めて見た枝を大きく伸ばし、葉を揺らす巨木のガジュマル。その枝を絡ませた風景は不思議なほど印象的で今も心に深く残っています。暑い夏のさなかでもガジュマルの木陰に入れば風が流れ、驚くほど涼しく心地よい。この木陰を建物で再現できないかと風を取り込む方法を考えました。南の島の風、木陰を抜けた涼風…その土地にある自然を生かした設計は、建築家としての私のその後の思想、信条を決定づけたと言っても過言ではありません。

山口大学名誉教授、(株)龍環境計画代表 内田文雄

コロナ禍で注目される新しい窓

各地で記録的な積雪がみられた今冬。寒さも厳しかったですね。

内田 コロナ禍となって、換気の重要性が高まりましたが、夏と冬の1シーズンを経験して、快適に換気を行うことの難しさを痛感しました。断熱性と換気という矛盾する要求が改めて課題となりましたが、DI窓は両方をみごとに解決する製品であり、凄い技術だと思います。
僕は自治体の公民館や図書館などを設計する仕事が多いので、大々的にDI窓を使う機会はあまりないと思いますが、その機会に恵まれれば、DI窓を取り入れた新しいシステムで、快適に換気が行える空間を考えてみたいと思います。

山口大学名誉教授、(株)龍環境計画代表 内田文雄

洗練された美しいデザイン

別棟のショールームで展示している高層マンション向けに改良されたDI窓の新商品の印象は。

内田 高層マンションなどにぴったりのはめ殺しのすっきりとしたデザイン、シャープで洗練された美しさが目を引きました。窓に組み込まれた24時間換気用の給気口は開発初期の段階の縦スリット意匠がみごとに解決され、すっきりとした横スリット意匠になっていました。
デザイン性の高い窓で開口部を大きく取り、明るく開放感のある空間を実現することと窓の断熱性を高めることは相矛盾する話であることが多く、建築家泣かせと言えます。しかしDI窓の高断熱性能なら問題を解決。この窓によって建築の可能性が広がったと思います。

換気しながら超高断熱の高度な技術力

DI窓に望むことをお聞きします。

内田 熊本県出身の私にとって、2016年4月に起きた熊本地震は衝撃的でした。私も何かできることがないかと被災地の災害公営住宅の設計に携わりましたが、当時、DI窓が商品化されて予算面で折り合いが付いたなら、被災された方に熊本の暑い夏をより快適に過ごしてもらうために迷わず採用したでしょうね。また三協アルミさんでは、価格を抑えた「DI-Lite(ライト)」といった商品も開発されていると聞きました。一般住宅などへの普及には技術面や性能面はもちろん、価格面も重要なファクターです。簡易版ができることはすごくいいと思います。また、DI窓の商品の認知度が上がれば使う人はすごく増えると思います。DI窓の認知度をどうやって上げていくか、これからのPR戦略にも期待したいですね。

サステナビリティを意識した建築を

大きな木を素材に使った建築物も手掛けていらっしゃいます。

内田 庭から軒、縁側を抜けた心地よい風が室内に自然に入ってくる建物や、地元産の木を使った公共施設などを手掛けています。これまでの仕事の中で、木の素材を巨大な梁や柱に使った図書館や、酒蔵をリノベーションさせた施設も印象に残っていますね。近年、手入れされず、荒廃が進む森林が増えています。一建築家として、その地域の自然素材や地元産の木を使った設計にこだわっていきたいですし、実際に使う人と一緒に考える建築を実践していきたいです。
設計において、自然環境のことや、地元素材を使った地産地消、自然エネルギー、エネルギー効率などを考えない建築はSDGsの社会で残ってはいけません。コロナ禍で、換気の重要性がクローズアップされ、今後ますますDI窓に対する追い風になってくると思います。

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