快適な換気と超高断熱の両立を実現
美しいデザインと機能性に魅了される商品
東京大学名誉教授 加藤 信介
DI(ダイナミックインシュレーション)を長年研究し、その技術を窓に適用する検討を行ってきた東京大学名誉教授 加藤信介先生にインタビュー。換気しながら超高断熱を実現したDI窓への熱い思いを伺いました。
空気の流れを制御し、熱損失低減
DI窓を研究するきっかけと、その原理についてお聞きします。
加藤 建築物の空調負荷計算で、給気口や排気口では貫流熱の計算が必要とされず、外気負荷のみが考慮されることへの疑問からDIの研究、その技術を窓に組み込むことを考えました。空気は温度が高いところから低いところへ流れる性質があります。ガラス面を通して外に熱が逃げるというのは、屋外と室内で温度差があるため。温度差がなければ熱は流れません。DIは、内外差圧によって起きる空気の流れを熱の逃げる方向とは逆方向に作ることで、内外温度差をゼロに近づけ、熱の移動をなくす技術です。空気の流れによって窓から逃げる熱を回収することで、外窓から室外への熱の損失を低減することができ、窓の断熱性能を飛躍的に高めます。
冬暖かく、夏涼しい、快適空間を
DI窓の構造や特長を。
加藤 DI窓は外窓、中間層、内窓で構成されており、外窓と内窓のそれぞれの上部に通気のための換気口、整流板を設けています。つまり換気口と開口部が一体化されているユニークな窓です。
冬季には、外気は外窓の上部に設置した換気口を通り、中間層へ。外窓に沿って下降、内窓に沿って上昇し、室内側の換気口から取り込まれます。導入外気は窓を通過する過程で貫流熱を回収することで、温度が上昇して室内に供給されます。
夏季は空気の流れを冬季と逆にすることで、室内に侵入する熱が低減します。夏だけを第2種換気にできれば、DIの効果だけでなく、窓から入る日射熱の排出もできます。
高層マンションへの採用に期待
DI窓に期待する思いをお聞かせください。
加藤 窓は採光と通風のためにあります。通常の窓は、閉めても採光はできますが、通風はできません。窓を閉めても新鮮な空気を取り入れられるようにしたくなりますね。DI技術を窓に使えば、通気、換気面で簡単に性能アップできます。また、一般的に窓は壁に比べて断熱性能が劣りますが、DI窓は壁の性能を超える高断熱を実現しました。
天井高まで設置可能なハイサッシのDI窓は、眺望にすぐれた高層マンションや、FIX(はめごろし)窓が多いタワーマンションなどへの設置をおすすめしたいですね。大きな開口部を設けると、エネルギーロスが大きくなりますが、そこでDI窓の高断熱性が活かされます。
快適な室内空間を演出する窓
理想の窓について
加藤 窓は屋外環境と室内環境の接点です。光や空気、熱や音の通過と阻止を自由に選ぶ調節弁になります。窓は快適な室内空間や癒しの空間演出には欠かせません。
建築物は意匠性やデザイン、美観が大切です。DI窓の採用によって壁の給気口は不要になり、壁がすっきりして美観も向上します。
大きな創造は模倣の積み重ねから
先生がよく言葉にされている「独創性は模倣の積み重ね」とは何を意味するのですか。
加藤 環境に合わせて生存機能や姿・形を変えたりする生物の進化は、遺伝子のミスコピーなどから起こります。遺伝子における進化のメカニズムというわけですが、技術や文化面でも同じことが言えます。たとえば職人。その道の達人となった親方から弟子への技能の伝承に際して、弟子は親方の技を横目で見ながら模倣(コピー)する。ただし弟子はそのままつくるのではなく、ちょっとだけ変える。それが独創性につながります。新たに創造性を発揮するメカニズムは、模倣の積み重ねと不完全な模倣というわけです。
もしエジソンが、レオナルド・ダ・ヴィンチなどが活躍したルネッサンスの時代に生まれ、電球や蓄音機を発明できたかと言えば、それは不可能ではないでしょうか。それ以前の先達が電流や熱、電気抵抗などの理論を解明していたからこそ、エジソンは偉業を成し遂げることができたのです。彼がいなくてもその時代の他の誰かが発明したでしょう。偉大な創造は模倣の連続性、継続性の中からしか起こらないのです。
DI窓も、DI技術の模倣から今の形と成りました。これから更に模倣を積み重ねることで、次の新しい形へと進化することを期待しています。